13 一番嫌いで一番好き
「ほんと、子供っぽいんだから!」
浴びせられるのは常に罵声。
でも、彼はへこたれなかった。彼女だけではなく、他の仲間たちの評価も異口同音だ。それでも、彼はこの癖を止めない。その根性は、誰もが評価している。
ひとえに信じる力だと思う。
武器防具に大仰な名を付けるのは、そうする事により、物にも魂が宿るから。回りくどい言い回しは―――純粋に、格好良いから―――
それゆえに、彼女にも同じくを望むのは道理ではなかろうか。と、彼は疑いもなく思っている。名は体を表す。彼女が普段愛用している武器に、装身具に、名を付ければ、きっとそれらにも生き物のごとく魂が漲り、真に彼女の良き相棒となり守ってくれるだろう―――例え彼が戦場で離れてしまっても、彼の代わりになってくれるに違いない。
彼は彼女の目の前ではっきりと理由を告げた。
「……ばっ……かっ、じゃないの!」
すると、彼女は普段にも増して眉を寄せ、顔を真っ赤にし、整った顔を歪めて吐き出すように叫んだ。肩まで震えているのは相当怒っているに違いない。だが、彼は分からなかった。なぜ、そこまで彼女が怒っているのか。
なぜか、と問えば口を真横に結ぶ。こちらが普段の大仰で華美な装飾のような言葉を紡げば、口が開き、罵声が飛ぶ。
だから、今度は彼はその中間の言葉で伝えた。
それでも、返って来るのは、ばかだの勘違いするなだの、ろくでもない言葉だった。彼は諦めてそれを受け入れる。自分をどう思っていようと、彼女が無事であればいい。だから、しつこく、せめて肩当てにでも名を付けてくれと請うがやはり受け入れられずにいた。
すでに彼女の得物には、「ウード」と名が付けられているのを彼は知らず、その問答はこれからも続く。